「チンギス・ハーン 〜蒼き狼〜」
ある人はこの映画に対し、こんな言葉を残した。
「まさに傑作。映画史に残る最高のスペクタクルよ!」
本当にその通りだと思う。この映画は『友情』『努力』『勝利』という名作と呼ばれるための条件をいとも簡単に、それもあり得るはずのないスケールでクリアしてしまったのだ。
それだけじゃない。ただのヒーローならば、人々は共感したりはしない。現代社会は混沌と共生している。社会制度しかり、今を生きるすべての人がなんらかの混沌を抱えている。政治不信は反乱を呼び、経済不信は暴動を呼ぶ。そんな中で人々が共感したのはこの映画の真のヒーローである、フビライ・ハーンであったのだ。兄チンギスのため、あえて汚れ役に徹したその人生に。社会の闇、帝国の闇を垣間見た彼は、リアルとダークサイドの狭間で葛藤する。現代に求められているヒーローは、彼のようなある種の“闇”を抱えるヒーローなのかもしれない。フビライはまさに、 “The Dark Knight” なのだ。
そんな新しい魅力を持つヒーローを中心に進められていくストーリーは四季のどれ?という問に答えるのは不可能である。全てを包括してしまっているからである。この映画は四季そのものなのだ。特にその事を表す印象的なシーンをあげるならば、春のような朗らかなラブシーンであろう。フビライは悩む。まるで冬のように。それを雪解けのように包み込む恋人は、まさに静御前のようであり、そのシーンはローマの休日のオマージュでもあった。
またクライマックスには壮大な仕掛けが隠されている。まず映像美に関してはワーナーのそれを完全に超えてしまっている。元寇後、キルギスの雪豹との戦いでモンゴル帝国の在り方に気付いたハーン兄弟。このクライマックスだけでも観る価値は十分にある。つべこべ言わず、劇場で体感することを勧める。
この映画を観ることは、即ちパンドラの箱を開けることを意味する。世の中の災悪は、全てこのパンドラの箱から飛び出した。最後に箱の底に残ったものは何かご存知だろうか?それは “希望” である。ハーン兄弟は映画という魔法を使い現代に蘇った。私達に混沌に打ち勝つための “希望” を届けに。
【最後に】
現代映画史において変革を起こした映画は?と聞かれると、ストーリーテリングという面ではタイタニックが挙げられるし、映像美という面ではアバターが挙げられるだろう。このチンギス・ハーン〜蒼き狼〜は、その両面で変革を起こした作品として、向こう10年は語り継がれるに違いない。そんな作品に出会えたことに、感謝。
栗本 滉一(IKKO)
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